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【埼玉の社長に訊く起業ストーリー】はシェアオフィス6Fのスタッフが埼玉県内で活躍する「社長」を訪ね、お話を伺う連載です。


1920年代、月夜の晩の屋根裏で、ひっそりと酒を造る人の影。禁酒法が制定され、酒類の製造や販売が禁止された当時の米国では、酒の密造が横行しました。彼らは当局の摘発を逃れるため、夜更けに作業することを好んだといいます。そんな密造酒を人はこう呼ぶようになりました。月明かりのもと造られる「moonshine」。

 

大宮の歓楽街の物音が少し遠くに聞こえる路地裏に佇む中華料理バルMoonshine(むーんしゃいん)。まるで密造酒が造られている当時の様子を思わせるような雰囲気のこのお店が今回のお話の舞台です。

 

バーカウンターに立つ星野さん

 

うちの料理と、お客さまの一番好きなお酒を一緒に召し上がっていただけるように、色々な種類のお酒を揃えるようにしています

 

そう話すのは、このお店のオーナー、星野剛久(ほしのよしひさ)さん。
「中華料理屋というより、中華バルの方がイメージとしては近いかな」という言葉の通り、豊富なお酒が同店の特徴。日本各地で製造される日本酒や焼酎、世界各国ウィスキーやクラフトジンなど、約200種類のお酒が並ぶ店内。先代から変わらず人気という手作りの春巻きなど、自家製の料理も魅力です。

 

大宮の人に愛され続ける秘密基地のような空間

今は2フロアで営業していますが、父の頃は2階だけで営業していました。まさに『密造酒をつくる屋根裏部屋』のような雰囲気で、かなりマニアックな店だったと思います。私が子どもの頃も『子どもが入る空間ではない』と子どもながらに思っていて、大人な空間だったのだと思います

 

星野さんの写真

 

今年でオープン41年目。開店当初から現在の場所で営業しています。
ご実家がお店の向かいにあるそうで、ご両親は常にお店と自宅の行き来だったそうです。

 

子どもの頃は、父と一緒に遊んだ記憶はあまりありません。店にいるのが好きな人だったんですよね。当時からの常連さんに聞く話から、父の人柄や、お店に込められた想いに気づかされることも多いんですよ

 

「厳しい人だった」と、お父さまのことを振り返る常連さんもいるそうで、お客さまの人生相談や、時にはお説教までされていたとか。
同時に、当時はまだ高価だった洋酒や、あまり知られていない珍しいお酒を飲んでほしいと、豊富にお酒を揃えていたそう。人間味溢れるお父さまのお店に、ついつい足を運んでしまう常連さんの気持ちが想像できます。

 

店に込められた父の想い

父の店を継ぐことは全く考えていませんでした

 

そう話す星野さんは、高校を卒業後、アパレル関係などのサービス業を10年ほど経験。先代のお父さまが亡くなられたことを機に掛け持ちでお店のお手伝いをはじめ、32歳の時に本格的に後継としてお店に入りました。

 

店舗として使われていなかった1階を改装して客席にしたぐらいで、お店の雰囲気は父の頃からそこまで変わっていません。入りづらさをなくしたところぐらいでしょうか(笑)

 

プレッシャーや責任感はあまり感じなかったと、前向きな姿勢で新しい生活を始めたという星野さん。店づくりや経営は、まさに後追いで勉強したそう。「店を残すこと、続けることに意味がある」という信念のもと、常連さんをはじめとするお客さまにたくさんの気づきをもらうと言います。

 

営業をしながら、父が店に込めた想いを知ることが多いですね。店内にディスプレイしている昔のレコードの雑誌や、お酒のラベルなどは父の頃から置いているものです。店には置いていませんが、レコードは1万枚ぐらいはあるんじゃないかな

 

店内の壁に並ぶお酒のラベル

 

お店の中に散りばめられたお父さまの「好きなもの」や、昔からの常連さんに話を聞く中で、徐々にMoonshine(むーんしゃいん)のあり方を形にしていきました。「表立って目立つ存在ではないけれど、ここに来れば何かあるんじゃないか、そう思わせるような隠れ家のような場所。そんな立場を確立させたい」と話します。

 

常にインプット精神 今は力を溜め込む時期

父の代からの想いを継いでか、私も『知らないお酒を飲んでもらいたい』という気持ちが強いですね。同時に地元のお酒も知ってもらいたいので、川越のCOEDOビールや蓮田の神亀酒造の日本酒、秩父のイチローズモルトなど、埼玉のお酒も豊富に揃えています

 

様々な種類のお酒が並ぶ

 

ランチ営業をしていない分、常にインプットを増やすことを大切にしていると話す星野さん。現在既に、SAKE DIPLOMAをはじめとする複数のお酒の資格を取得。現在はソムリエの勉強に励んでいるそう。
また、製造の現場を知った上でそのおいしさを伝えたいという思いから、酒蔵まで足を運ぶことも多いと言います。

 

埼玉県内の酒蔵はもちろんですが、宮崎県の松露という酒蔵の芋焼酎は優しい味わいが特徴で、この3年ほどはその製造の手伝いもさせてもらっています

 

実はこだわりは人一倍強いと話す星野さんは、お客さまの好きなお酒の中でも一番おいしいと思ってもらえるものを提供したいと話します。

 

星野さんの写真

 

飲食店の業界での経験がまだ浅い分、今は何をやるにもインプットするのみだと思っています。資格を取得することも、飲食店経営者としてのひとつの信頼や説得力にも繋がるなと

 

Moonshine(むーんしゃいん)は自分の「ベース」 そこから広がる新しい目標

資格取得や都内での勉強会の参加、クラフトビールの注ぎ手としてのイベント参加など、あらゆる方面にアンテナを向ける星野さん。
今後の目標を伺いました。

 

まずは、母を安心して店から引退させられるように頑張ろうと思います。同時に、『こんな店をやってみたい』と自分の中でイメージしているものも実現させられればとも

 

日本酒やクラフトジンなど、好きなお酒とそれに合う料理を提供する専門店。星野さんの中での新店舗のイメージは膨らみます。
しかし、しっかりした口調で語るのは「Moonshineは絶対になくしてはいけない場所」ということ。

 

ここで常連さんとお話ができるのは本当に楽しいし、新規のお客さまにMoonshineで新しい何かを発見してもらうのは何よりも嬉しいです。お客さまとこの距離感に、一番のやりがいを感じます。生まれも育ちも大宮なので、少しでも地域の発展に貢献していければと思っています。自分の得意なジャンルで街を引っ張っていきつつ、雇用も生み出せたらいいですね

 

星野さんにとってMoonshineは、まさに軸になっている場所。ここでの発見や気づきを新しい形でアウトプットしていきたいそう。

 

星野さんの写真

 

Moonshine、密造酒の作り手が佇んでいるかのようなそのお店の扉を開けると、新しい発見があるかもしれません。
あなたはいつ、その扉を開けますか?

 

星野さんと筆者

 

常に前向きな姿勢で「とにかくやってみよう」と、新しいことに挑戦することにもためらいがない星野さん。
「お店に入ってから初めて知ることだらけだった」という星野さんのお話の至る所に、お父さまへの想いが感じられる気がしました。
ひとりでしっぽりも、お友達との楽しい時間も。知っているとちょっと自慢したくなるような、そんな素敵なお店です。

 

Moonshine(むーんしゃいん) オーナー 星野剛久さん

星野さんの写真中華料理バルMoonshine(むーんしゃいん)代表。1981年生まれ。埼玉県さいたま市大宮区で、さまざまなアルコールと中華を中心とした料理を提供する中華料理バルMoonshineの代表・運営を務める。
埼玉県立浦和東高校を卒業後、アパレル関係などのサービス業を10年ほど経験し、現職。
同店の運営や、地域のイベントでのビールの注ぎ手としての参加など、さまざまな場所で活動している。埼玉県さいたま市在住。

 


この記事を書いた人

学生時代はアルバイトスタッフとして、2017年夏からは正社員スタッフとして6・7・8Fの運営をしています。心がほっこりする文章を読んだり書いたりするのが好き。7Fでは、大宮経済新聞をはじめ、7F運営会社であるコミュニティコムでライターとして記事を書いています。学生の頃から環境問題に関する政策提言や国際会議に関わっていて、地域の自然保護や環境教育についてもっと勉強したいと思っています。大のベーグル好き。オタクです。お気に入りのベーグル屋さん・パン屋さんがあったら是非教えてください!



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