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【埼玉の社長に訊く起業ストーリー】はシェアオフィス6Fのスタッフが埼玉県内で活躍する「社長」を訪ね、お話を伺う連載です。


株式会社温泉道場 代表取締役 山崎寿樹さん

 

「#おふろcafe」。SNSで検索すると、専用の部屋着に着替え楽しそうに笑う若者の写真が多く目に入ります。
カフェ風のワンプレートごはんやデザート、ゆったりとしたソファにハンモック。
写真だけでも、その温かみやゆったりとした時間の流れが伝わってくる温浴施設が、特に若い女性やカップル、そしてファミリー層の注目を集めています。

 

今回は、埼玉県を中心に「おふろ×カフェ」という、今までにない新しい温浴施設「おふろcafe」を展開する「株式会社温泉道場」の代表を務める山崎寿樹(やまざき としき)さんにお話を伺いました。

 

1500カ所以上の温浴施設を巡った末、作りたいと思ったのは「心から自分が好きな場所」

 

 

埼玉県さいたま市大宮区の鉄道博物館駅(埼玉新都市交通ニューシャトル 大成駅)から徒歩10分、ふんわりとした字体で書かれた「おふろcafe」の暖簾。
一歩中に踏み入れば、そこにはまるで北欧の家のリビングのように広々とした、それでいて温かみのある空間が広がっています。

「おふろcafe utatane」は、もともとあったスーパー銭湯の経営状況が振るわなくなったため、株式会社温泉道場が大規模にリノベーションし、おふろとカフェを掛け合わせた新スタイルな温浴施設へと生まれ変わってできたものです。

2011年に設立した株式会社温泉道場は、温浴施設の運営委託や全国の温浴施設の事業再生を行う新たな業態の企業。

運営代表を務める山崎寿樹さんは、前職で大手コンサルティング会社である株式会社船井総合研究所にて、日帰り温泉施設に特化したコンサルティングを担当。全国1500カ所以上の温浴施設へ足を運んだ経験から生まれた想いがあるといいます。

 

“たくさんの温泉や温浴施設を回りましたが、自分が『心からこのお店が大好き』と思えるお店があまりなくて。
「おふろcafe utatane」のコンセプトを考えていたときは、一般的な温浴施設とは違う切り口から付加価値をつけて、『こんなお店があったらいいな』と思える施設を作りたいと思ったんです。”

 

 

実は山崎さん、プライベートで数百軒ものカフェを回っているほどのカフェ好きだそう。中でも、ハンドメイド調の雰囲気がお好きということで、「おふろcafe utatane」も、居心地を重視し、家のように落ち着ける空間を目指したのだといいます。

温浴施設とカフェを掛け合わせるという斬新なアイディアがヒットし、確実にその名を広げている「おふろcafe」。山崎さんの発想の裏側には、それまでの経験や知識の糧が詰まっていました。

 

 

独立を前提として就職 そこで学んだのは徹底したマーケティング力とオーナーの立場に立ったコンサルティングスキル

 

学生時代から「起業」に関心を抱いていた山崎さんは、大学では会計学を専攻。当時から自身の起業ロードマップを計画されていたそうです。

 

“両親共に事業をやっていたこともあって、いつかは自分も「起業」という形で何かをするのかなと漠然と考えていました。
起業するのにも色々な手段がありますが、私の場合はまずはどこかの企業に属して経験やスキルを得てから、既にある企業でいかすのが一番賢明かなと。起業を見据えて色々な業種やビジネスの基本を学ぶためにコンサルティング会社に入社しました。”

 

船井総合研究所での配属先は、温浴ビジネスチーム。「地方を担当することが多かった」と話す山崎さんは、特に日帰り温泉施設のプランづくりや事業再生を担当。新規施設の立ち上げにも携わり、現在の徹底したマーケティング力や綿密な事業計画力の根幹になっているそう。
入社4年目にはチーム内で1番のコンサルフィーを上げるほどにまで上りつめたという山崎さんのコンサルティングには、どのような強みがあったのでしょうか。

 

“大切にしていたのは「オーナーの心に寄り添う」こと。
事業をしている両親を見て育ったのもあり「社長業って意外と孤独なんだな」というのはわかっていて。
社長としての業務や従業員との関係性など、社長ならでは悩みや相談に乗りやすかったのだと思います。それに、コンサルタントとしての数字の扱い方の覚えも早かったので、正確に「数字で伝える」ことも同時に行えた点が良かったのかなと思います。”

 

他の誰よりも「人間対人間の付き合い」では負けない。その信念のもと多くの温浴施設の再生に携わった山崎さん。そんな山崎さんが「独立」という道を歩みだしたのは、チーム一番の戦力として活躍していた入社5年目の時期でした。

 

依頼を受けたのは従業員60人を抱える、経営が厳しくなっていた温泉施設

 

入社して5年が経ったころ、山崎さんのもとにある依頼が舞い込みます。
「埼玉県内にある2店舗の温泉施設(現 昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉、おふろcafe 白寿の湯)の事業再生・運営をして欲しい」。施設の不動産オーナーからの相談でした。

 

“起業するのなら、全くゼロから何かを始めるよりも自分のよく知る業種であるべき。「ここなら5年間の経験や知識をいかせる」と思いました。”

 

株式会社温泉道場を設立し、2店舗の温泉施設の運営を引き継いだ山崎さん。取り組んだのは大規模な修繕ではなく、そのマーケットに合うサービスの再検討でした。
銀行からの融資を受けずに再生するスキームを組み、めまぐるしいスピードで経営のあり方を変えていったといいます。

 

“「温泉が詰まって出なくなる」というアクシデントもありました。
「本当にまずい」と思いましたが、こんな痺れそうになるような体験は企業の代表としては大切だと思います。これからもっと大きい「大変なこと」が起きるかもしれない。そういうときのために、1つ1つの困難にも意味があるんだなと。”

 

当初に立てた企画や、それに沿ったサービスが全て正しいとは限らない。「やってみるからわかることがたくさんあります」と山崎さん。

 

 

「おふろcafe」ブランドの新店舗「おふろcafe bivouac」はグランピングをコンセプトに、30代〜40代の男性をターゲットに高級アウトドアブランドのグッズなどもそろえ、2016年、埼玉県熊谷市にオープン。
しかし意外と多かったというのがファミリーやママ友など、子連れからのニーズでした。当初からの雰囲気はそのままに、子どもも楽しめる空間づくりやイベント企画に取り組んでいるそう。

 

 

「『埼玉には温泉道場があるぞ!』と地元の人に思ってもらえるような会社にしていけたら」と話す山崎さんですが、今や「おふろcafeのために埼玉までやってきた」という客層も少なくありません。

そんな株式会社温泉道場が目指す今後とは、どのようなものなのでしょうか。

 

まさに「道場」な温泉道場

 

従業員のことを「メンバー」と呼ぶ山崎さん。株式会社温泉道場では、施設運営やイベント企画など多くの裁量をメンバーに任せているそう。
発言や企画案スピーチなどでメンバーの成長が見られることが、何よりやりがいを感じる瞬間だといいます。

 

“社名に表れている通り、うちの会社ではメンバーにどんどん学び・成長してもらえる「道場」でありたいと思っています。
良い意味で色々なことを任せているので、その分責任やプレッシャーを感じる機会も多いかもしれませんが、それ自体が人材育成に繋がるのだと思います。”

 

現在の正社員の半数以上は新卒だという株式会社温泉道場。
メンバーの平均年齢は30歳ほどと若く、将来独立を目指している方も少なくないそうです。

山崎さんの目標は2025年までに、メンバーから5人の社長を育てあげること。
そのために、社内ベンチャーや子会社を設立しやすい環境や制度をより一層整えていきたいそう。

 

“前職でコンサルティングをしていた頃大事にしていた「人間対人間の付き合い」は、メンバーとの間でも大切にしていきたいです。型にはまったことを粛々とやるのではなくて、自由度を残しつつメンバー皆でおもしろさや可能性を追求していく、そんな会社でありたいと思っています。”

 

最後に「埼玉で起業する」ということについての思いを聞かせていただきました。

 

“埼玉は、都会と田舎が共存している地域で仕事でもプライベートでも過ごしやすい地域だと思います。すぐに東京にも出られるので、情報のキャッチもしやすいです。
起業についていえば、企業に対する目的がはっきりしていることがまず大切かなと。それがないと、自分もぶれてしまうし、その後ついてくるメンバーに思いや方向性を共有できません。
起業に対するリスクがまだ大きい日本の制度ですが、それでもやるというモチベーションがあるのであればやるべきだと思います。”

 

「私にとってのそれは『人を育てたい』という思いなんです」と話す山崎さんの言葉は、まっすぐで、そして温かみに溢れています。

 

 

「おふろcafe」という新たな空間を世の中に生み出した、株式会社温泉道場。山崎さんを筆頭に、メンバー全員でその可能性を広げていく。株式会社温泉道場には、そんな力強さを感じました。

 

株式会社温泉道場

昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉

おふろcafé 白寿の湯

おふろcafe utatane

おふろcafé bivouac

四日市温泉 おふろcafé 湯守座

おふろcafé bijinyu(美肌湯)

 

株式会社温泉道場 代表取締役 山崎寿樹さん

株式会社温泉道場 代表取締役 山崎寿樹さん株式会社温泉道場 代表取締役。1983年1月生まれ。埼玉県に4店舗(昭和レトロな温泉銭湯玉川温泉、おふろcafé utatane、おふろcafé bivouac、おふろcafé 白寿の湯)、三重県に1店舗(おふろcafé 湯守座)の温浴施設を運営。静岡県静岡市にはフランチャイズ店舗(おふろcafé bijinyu)1号店がある。
専修大学商学部会計学科を卒業後、2006年4月に株式会社船井総合研究所入社、温浴ビジネスチームで主に日帰り温泉を専門にコンサルティングを行う。2011年3月から株式会社温泉道場代表取締役。2012年8月より一般社団法人ニッポンおふろ元気プロジェクト代表理事として『おふろ甲子園』を企画・運営する。温泉アイドルORF48サブプロデューサー。温泉ソムリエ協会の温泉ソムリエ師範としても活躍中。埼玉県ときがわ町在住。


この記事を書いた人

学生時代はアルバイトスタッフとして、2017年夏からは正社員スタッフとして6・7・8Fの運営をしています。心がほっこりする文章を読んだり書いたりするのが好き。7Fでは、大宮経済新聞をはじめ、7F運営会社であるコミュニティコムでライターとして記事を書いています。学生の頃から環境問題に関する政策提言や国際会議に関わっていて、地域の自然保護や環境教育についてもっと勉強したいと思っています。大のベーグル好き。オタクです。お気に入りのベーグル屋さん・パン屋さんがあったら是非教えてください!



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