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【埼玉の社長に訊く起業ストーリー】はシェアオフィス6Fのスタッフが埼玉県内で活躍する「社長」を訪ね、お話を伺う連載です。


記念すべき第1回の「社長」は、NPO法人クッキープロジェクト代表理事の若尾明子さん。NPO法人クッキープロジェクトの事務所がある、福祉作業所のひとつ「お菓子工房coco」にお邪魔しお話を伺いました。

 

埼玉県小児医療センター内店舗「おかし屋マーブル」

さいたま新都心にある埼玉県小児医療センターの受付横にある「お菓子屋マーブル」はクッキープロジェクトの初店舗


クッキープロジェクトの初の常設店舗「おかし屋マーブル」は、2016年12月末にさいたま市岩槻区よりさいたま新都心に移転した埼玉県小児医療センターのプレールーム隣にオープンしました。
 
白木の明るい内装や棚に、黒板、カラフルな雑貨もあり、病院にいることをふと忘れるようなお店です。置いてあるクッキーは可愛いパッケージで手土産としてもちょうどよく、価格も手ごろです。
 

「お菓子屋マーブル」にはクッキーのほか福祉作業所で作られた雑貨も置く


 
店内に置いてあるお菓子や雑貨はすべて主に埼玉県内の作業所で、さまざまな障がい者を持つ人たちが一つ一つ丁寧に作り上げたもの。パレスホテル大宮が主催する福祉の焼き菓子コンテストで入賞した商品もあり、約30種類のクッキーを1袋100~350円で販売しています。
 
「見た目も味もパッケージも、ケーキ屋さんで売っているようなお菓子と遜色ありません」と若尾さん。

 

NPO法人クッキープロジェクト

NPO法人クッキープロジェクトは、
・障がい者が働く福祉作業所で作られるクッキーやお菓子の品質を向上させるための商品開発講座「PR塾」の運営・開催
・商品の販路拡大のため年一回浦和コルソでクッキーの販売会の開催
・障がい者の社会参加の機会として「デコッパ卓球選手権」の運営・開催
などを主な事業として行っています。

 

一般企業からNPOへ

親しみやすくさっぱりとした笑顔の若尾さん、誰にでもフラットに接する姿はNPOの活動にしっくりはまっているように見えますが、初めからNPOにいた訳ではないといいます。
 

いつも笑顔の若尾さん


日本女子大学の家政学部で家政経済学を専攻。在学中にボランティアや高齢者福祉の分野にも関わる機会もありましたが、大学を卒業後は一般企業に就職。NTTグループで営業職に。
 
サラリーマンとして3年ほど勤務したころ、大学時代の恩師からの勧めで介護事業に関する講座に参加したことで若尾さんのキャリアに変化が訪れます。営利を追求する一般の企業とはまったく違うことをしていることに改めて驚いた若尾さんは、その恩師からNPOでの職を紹介されました。
 
即座に転職を決意し、さいたまNPOセンターの職員となった若尾さん。介護保険サポーター事業を担当し1000人のボランティアをまとめる、介護保険の利用者400人を訪問調査するなど、現場の生の声に触れる毎日でした。
 
その後、中間支援のNPO法人ハンズオン埼玉を設立し、理事・事務局長を務めます。そして同団体の業務のひとつとして2007年10月にクッキープロジェクトを立ち上げました。
 
若尾さんとクッキープロジェクトの出会いはここからです。

 

障がい者の人が作っているから支援のために買おうではなく、美味しそう、可愛いから買いたいと思ってもらえるクッキーを

パッケージも可愛く美味しそうなクッキー。

 

「私が関わり始めたころのクッキーは、正直、すごく美味しいと言えるものではありませんでした。パサパサだったり、味もいまひとつ。それでも値段も一袋50円と格安で、障がい者の家族や知り合いなどが支援のため買っていたことも多いと思います」と若尾さんは振り返ります。
 
それを続けていても、売り上げは伸びず、障がい者の働く場所や機会は増えていかないと思った若尾さんは「一般の人にも美味しそう、可愛いから買いたいと思ってもらえるクッキー作りを目指さなければならない」と立ち上がりました。
 
助成金の申請などで面識のあった行政の担当者に相談に行き、同じように企業として福祉に貢献できることはないかと模索していたパレスホテル大宮の毛塚智之シェフと出会います。福祉作業所で作るクッキーを「主に知人や家族が買っていた」ものから「一般に売れる」商品に改良。一流のシェフとの協働は、プロジェクトの大きな力となりました。
 

ゆっくりと丁寧な作業でクッキーが作られます


シェフからのアドバイスは「プロのレシピをそのまま教えるのではなく、現状のやり方を確認して、そこから改善していく」というもの。障がい者が無理なく対応できるように、作業所向けのレシピや方法を試行錯誤していきました。味だけではなく、パッケージにもこだわり、「自信を持って売れる商品に」と値段設定も改めます。

 

販路の拡大、毎年賑わうクッキーバザール。2日間で100万円の売り上げ達成。作業所の作るクッキーを「一般に売れる」商品に。

商品が良くなっても売る場所がなければ意味がありません。オフィスやお店の隅に「置きクッキー」として委託販売をするほか、浦和コルソで年1回「クッキーバザール」を開催しています。県内の作業所が作るクッキーを50種類以上販売。
 
初めこそ本当に売れるだろうか、、と心配したものの毎回売り切れも続出。今では2日間で100万円以上の売り上げとなりました。商品が売れることによって、作業者や施設のスタッフのモチベーションもあがっていきます。

 

浦和コルソでの年1回の「クッキーバザール」

浦和コルソでの年1回の「クッキーバザール」


 

NPOスタッフからNPO法人代表に

ハンズオン埼玉のスタッフとして他の業務もこなしながら、クッキープロジェクトの活動が若尾さんにとって大きな存在となっていきました。そして、2010年8月に任意団体クッキープロジェクトとしてハンズオン埼玉から独立。2016年6月にNPO法人クッキープロジェクトとなります。
 

ホームページは若尾さんがWordPressで制作

 

まぜこぜ

「おかし屋マーブル」の「マーブル」の意味は「まぜこぜ」。障がいのある人もない人も、会社員も学生もフリーターも、大人も子どもも、いろんな人が「まぜこぜ」になって暮らす社会が自然で面白い。そんな社会になってほしい。それがクッキープロジェクトの願いであり目指すところです。
 
クッキープロジェクトの事務所に隣接する作業所「お菓子工房coco」では、数人が慣れた様子で作業していています。障がいの種類や程度にもよるかもしれませんが、丁寧な作業で、自然なコミュニケーションを取りながら進めています。
 

ランチタイムはみんなで持ち寄った料理が並ぶ


 
障がいのある人ない人を分けることなく、自然と一緒に作業し楽しむ。若尾さん自身からも「障がい者のために頑張る」というよりも「やれることを一緒にやっていこう」という目線が感じられます。
 
若尾さんは「法人化したことで、『売り上げを達成する』『社会的信用度があがった』という代表者としての責任を感じていますが、引き続きいろいろな皆さんに助けていただきながら一歩一歩進んでいきたいです」と決意をにじませていました。
 
ふんわりとした自然体な若尾さんの魅力をそのままに、クッキープロジェクトと若尾さんのますますのご活躍をこれからも応援させていただきたいと思います。
 

若尾さん、理事の谷居さん、お忙しいところありがとうございました!

ちなみに弊社コミュニティコムが運営するコワーキングスペース7Fにも「置きクッキー」があり、毎回入荷するたびに、あっという間になくなる人気のお菓子です。
 
NPO法人クッキープロジェクト
 

NPO法人クッキープロジェクト 代表理事 若尾明子さん

NPO法人クッキープロジェクト 代表理事 若尾明子さんNPO法人クッキープロジェクト 代表理事。日本女子大学家政学部家政経済学科在学中に、ボランティアや高齢者福祉に関わる。一般企業に就職後、さいたまNPOセンターに転職、介護保険サポーター事業を担当。その後、中間支援のNPO法人ハンズオン埼玉の理事・事務局長を務め、2007年10月にクッキープロジェクトを立ち上げ。2010年8月に任意団体クッキープロジェクトとしてハンズオン埼玉から独立。2016年6月にNPO法人化。NPO法人クッキープロジェクトの代表理事を務める。


この記事を書いた人

株式会社コミュニティコム社員で、主にライター担当。大宮経済新聞副編集長や教育講座事業の「チエモ」など担当しています。エジプト2年、フランス7年、ハンガリー2年住んでいました。フランス語は何となく覚えていますが、アラビア語とハンガリー語は忘却の彼方です。一般社団法人さいたま市地域活性化協議会・理事。埼玉新聞タウン記者。



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