こんにちは。シェアオフィス6Fスタッフ編集部です。
「起業って何から始めれば?」「始めに済ませておいた方が良い手続きは?」など創業したいが具体的に何をすればよいか分からない、あるいはこれから会社を設立しようとしている人に情報をお届けする新連載「創業・起業支援オンライン塾」をスタートします。
「創業・起業」は「士業」の方とのお付き合いの始まりでもあります。自分自身が会計、経理に精通している、法令を読むのが好きで熟知しているという方は自分でなんとかなるかもしれません。でも、そうではない場合、まずは創業・起業する事業に全力で取り組むことを優先したいですよね。そんな時に頼りにしたいのが、公認会計士、税理士、弁護士、司法書士、社会保険労務士などの「士業」の方々です。
今回は、群馬県前橋市で「山崎賢治税理士事務所」を開業している、山崎賢治さんに取材し、税理士の立場から「創業・起業する際の流れや注意点」などを教えていただきました。
– もくじ –
山崎賢治税理士事務所について
税理士の仕事とは
登記とは
実際に法人登記をする際に税理士が関わるところ
✔ 税理士が法人登記時にすること
✔ 法人登記後に税務署に提出する書類
✔ 出した方が得!「青色申告書の承認申請書」「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」
✔ 税理士とはいつからお付き合いすれば良い?
✔ 税理士はどこで見つければよい?
✔ 創業・起業時に一番大事なこと
山崎賢治税理士事務所について
群馬県前橋市に事務所を構える「山崎賢治税理士事務所」は、税理士で公認会計士でもある山崎さんが2012年(平成24年)に開業しました。業種にこだわらず、中小企業、個人事業主の一番の相談相手になることを目指している会計事務所です。
税理士の仕事とは
– 山崎さん、本日は取材にご協力いただきましてありがとうございます。まず始めに、税理士とはどのような仕事をするのかについて教えていただけますか?
今日はよろしくお願いします。初めての方にも分かりやすいように少しざっくりとした説明や言葉を使ってお話したいと思います。
まず、税理士は基本的には税金に関する仕事をします。会社や個人事業主の方のご依頼を受け、会社や個人の「もうけ」に関しての税金の計算をし、申告書を作るのが主な税理士の仕事のひとつです。さらに、申告書の計算をするにあたり、そのベースになる決算書の作成をお手伝いすることもあります。
– 申告書を作成する際に必要なものが決算書なのですね。
はい。法人の「もうけ」に対しては「法人税」、個人の「もうけ」に対しては「所得税」という税金がかかります。「いくらもうけたか」というのを計算しているのが「決算書」という書類なんです。この決算書に基づいて税金の計算をします。決算書の作成には少し複雑な会計の知識も必要なため、税理士が会社の決算書の作成をお手伝いすることもあります。
– 決算書の作成を手伝ってくれることも税理士としてのお仕事という訳ですね。
そうですね。この決算書という書類は単に税金の計算をするためのものではなく、「会社がどのように『もうけ』を生み出したか」というのを表しているものなんです。すると、この決算書を掘り下げることによって、そこから経営相談という仕事に繋がります。
具体的には、会社の「もうけ」が増えたのは、「売り上げが増えたからなのか」、それとも「経費が減ったからなのか」、そして「それがなんで変化したのか」、「経営者としての行動はどうだったのか」、という話をしていくと、その会社が今後どのようにしていけばいいのかというアドバイスにも繋がります。そのため3番目の仕事として、このような経営助言というお仕事をすることが増えています。
– まとめますと、第1に申告書を作ること、第2に申告書のベースとなる決算書を作成すること、第3に経営助言を行うことなのですね。
そうですね。「税理士」という仕事は、税金に関することだけでなく、会社の経営にも深く関わっている仕事なんです。
法人登記とは
法人登記は「会社を設立します」ということを、行政に届け出ることです。法務局に登録申請し、「法人登記簿」に記載されることによって、法人が成立します。
実際に法人登記をする際に税理士が関わるところ
✔ 税理士が法人登記時にすること
– 次に創業するにあたって税理士が関わることについてお伺いさせてください。登記をする際に、税理士はどのようなお手伝いをしていますか。
税理士は登記前に関してはほとんどすることがありません。ですが、税理士はお客さまとの付き合いが長くなることが多いので、さまざまな専門家をご紹介する窓口となることが多いですね。また、登記後に関しては税務署に提出する書類があるので、その書類の作成と提出は税理士が行います。
✔ 法人登記後に税務署に提出する書類
– 法人登記にはどんな専門家が関わるのですか?また税務署にはどんな書類を提出するのですか?
具体的には、法人登記をする際に書類を作成するときは司法書士に、社会保険や労働保険といった労務の関係は社会保険労務士にお願いすることが多いです。税務署には登記後に一般的には次のような書類を提出します。
・法人設立届出書
・青色申告の承認申請書
・給与支払事務所等の開設届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
・消費税関係の届出書
– いろいろな書類を提出する必要があるのですね。
✔ 出した方が得!「青色申告書の承認申請書」「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」
そうですね。提出が義務ではないのですが出した方が得することが多いものが青色申告の承認申請書と源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書です。青色申告の承認申請書はざっくり言うと会社の帳簿をしっかりと作成する代わりに特例で税金を安くすることができる申請書です。
また、従業員の方にお給料を払う場合には所得税という税金を源泉しなければならず、これを翌月10日までに税務署に払うことになります。ただし、これを年2回に変更することができるのが「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」です。消費税関係の届出書は、設立してから2年間は原則として納税の義務がないため必要ないことが多いのですが、特殊な例で消費税を払いたい場合に提出します。
✔ 税理士とはいつからお付き合いすれば良い?
– さまざまな特例があるのですね。税理士の仕事は登記後とのことですが、実際に税理士の方とはいつごろからお付き合いするのが良いでしょうか。
税理士とはなるべく早い段階からお付き合いすることをお勧めします。創業しようと思った時から相談できる税理士を探してください。一番のネックは青色申告の承認申請書です。結構よく聞く話なのですが、店などを開業し、登記は司法書士に依頼しきちんと行っていても税金関係のことまで手が回っておらず気づいたときには、青色申告の書類提出期限がすでに過ぎていたということがあります。開業したばかりで売り上げもそれほどない時期なのでつい後回しになってしまうのかもしれません。青色申告は翌年申請できますが、税務の特典が一年間利用できなくなってしまいます。また、銀行から借り入れをしたいといった場合も税理士と一緒に創業計画を作っていくこともあります。
– お付き合いしていく税理士の方をなるべく早く見つけた方が良いというのがよく分かりました。
税理士には起業前から相談してもらって、開業や起業のタイミングを伝え、必要な書類、提出期限を確認してもらい、必要に応じて税理士に作成してもらいながら起業の手続きを進めるのが良いと思います。
✔ 税理士はどこで見つければよい?
– 税理士の方に知り合いがいない場合はどうすれば良いですか。
例えば商工会議所のような創業者向けの相談を受付けているところや、県にもそのような窓口がありますし、あとは、銀行とかにも創業支援をしているところがあります。日本政策金融公庫も力を入れておりますので、そのようなところからも紹介してもらえます。
– 実際には専門家を紹介してもらえるところは意外と多いのですね。それならば、創業したいと思ったら、創業支援の窓口に行くのも一つの選択肢としてありますね。
✔ 創業・起業時に一番大事なこと
そして何よりも大事なのは、「将来への明確な計画、自分自身が何をやりたいかを考えること」です。将来、十年後、二十年後を何やりたいのか、それを実現させるために何をどのようにするのが良いか、どんな方法があるかをしっかりとなるべく細かく、深く考えることです。それが、今後の商売をする上での分岐点となると思います。
– 本当に大切なのは起業に際し自分が実現したいことについてしっかりと考え見極めることなのですね。
山崎さん、本日はお忙しいところ本当にありがとうございました。
山崎賢治税理士事務所
群馬県前橋市国領町2-23-9
取材、記事執筆:常原佑睦
監修:山崎賢治
編集:大胡由紀